第28章 団子より花
久しぶりの城下町。
仕立物を届けに行くのも本当に久しぶり。
カルチャースクールに、お城の中の事がここ最近忙しくて、中々本職である(それは言い過ぎ?)針子の仕事が出来ないでいたけど、反物屋の主人から直々に依頼を受けて、久しぶりに張り切って仕立てる事ができた。
信長様と一緒にいたいからお城の事も頑張るって決めたけど、やっぱり大好きな縫い物をしてると時間があっと言う間で楽しい。
カルチャースクールで仲良くなった姫達が嫁ぐ時には、白無垢を縫わせて欲しいと思うし、お市の赤ちゃんの茶々の着物も縫って送ってあげたい。
信長様のカジュアルな着物も縫わせてもらいたいな。
縫い物のことを考え出したら止まらない位にやっぱり大好き。
でもあんまり没頭しすぎると、食べる事も、時間も忘れちゃって、この間なんか、針子部屋から信長様に無理矢理抱えられて天主に連れて帰られたっけ。気をつけなくちゃ。
久しぶりの城下はすっかり秋色だ。
路面に並ぶ布地や小物の色合いも深みが増してきたし、食べ物屋さんからは、栗やお芋などの秋の味覚の匂いが漂ってくる。
「ん〜いい匂い。届け終わったら、甘味屋さんで何か買って帰ろうかな」
信長様もここの所とても忙しいから、差し入れでもしようかな。ほんとは二人で甘い物を食べて少しでも一緒に過ごせるといいけど、本格的な冬に備えて冬支度が始まった為、お城の人達はとても忙しくて夜も中々会えない。
ここら辺はどれくらい寒くなるんだろう。
雪も降って、結構積もると聞いたからやっぱり寒いよね。
安土に来た時は3月も終わりに近かったから、この時代の冬を経験していない私は、結構痛い目に合いそうでちょっと怖いな。
「暖かい着物とかもデザインして作ってみようかな」
色々なことを考えながら歩いていると、
突然ぐっと、手を引っ張られて路地裏へと引っ張られた。