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恋に落ちて 〜織田信長〜

第24章 痕付けの代償



広間での報告を終え、信長様が天主に戻ってきた時は、夜も遅くなっていた。

甲冑を外させて欲しいとお願いをして、パーツ毎に外して行く。途中、紐に血が付着していて、手を止めてしまった。

「俺が、怖いか」

信長様が紐を触る事を躊躇した私の手を優しく握った。

「っ、違います。ただ驚いてしまって、ごめんなさい」

慌てて手を動かして紐を解こうとすると、

「無理はするな、もう貴様に逃げられるのはかなわん」
冗談っぽく、でもさみしそうに笑いながら私の手をやんわりと止めた。
あの日の事は、私だけでなく、信長様の心にも重く響いているのだと初めて思った。

「私は、もう逃げません。その、人が死ぬ事とか血とかはやっぱり怖いんです。でも、それ以上に信長様の側にずっといたいんです。だから、私に最後までやらせて下さい」

作業を進めて行くと、やはり所々、紐には血が付いていたけど、何故かその他の場所には着いていない事に気付いて不思議に思った。もしかしたら、私が怖がると思って、信長様は事前に洗い流してきたのかもしれない。流石に紐までは落とし切れなかったとしたら、さっきのさみしそうな笑顔に愛おしさが募った。

「終わりました」
最後のパーツを床に置くと、腕を引っ張られ、掻き抱かれた。

信長様の気持ちが、力強く抱きしめる腕から伝わる様だ。

「信長様、苦しい。」
腕に抱き潰されそうで、訴えると、僅かに力が緩んだ。

信長様の顔を見上げて頬に手を寄せ、鼻と鼻を擦り合わせた。

「お帰りなさい。信長様がご無事で良かった」

鼻先を合わせ、デコをくっつけ、唇を触れ合わせながら囁く。誰よりも、あなたが大切なんだと、どうすれば伝わるんだろう。

「ふふ、前髪が少し伸びましたね。後で切らせて下さい」

おデコを離して信長様の前髪に触れる。

「アヤ」
わたしの名を呼んで、信長様の前髪に触れていた私の手首を掴む。

「貴様は、俺のものだ」
熱を孕んだ目で見つめられ、掴んだ手の指先を軽く噛んだ。

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