第24章 痕付けの代償
そうこうしているうちに一週間がたち、謀反を制圧した信長様達が今夜にも戻ってくるとの報せが届いた。
側室として嫁いでいた姉上は無事に保護されたらしい。
夕方になり、城門まで信長様を迎えに行く。
「アヤ様、そんなに落ち着かなく歩き回ってると、御館様が戻られる前に疲れてしまいますよ」
門番の人達に笑われてしまうくらいソワソワと落ち着かない。
「そうですよね。でも、落ち着かなくて。まだ見えてきませんか」
高台にいる見張り番の人に聞いてみる。
「あっ、アヤ様、遠くに御館様の一行が見えてきました」
「ホントですか?」
その一言で、もう居ても立っても居られない。
城門を飛び出して、ひたすら真っ直ぐな道を駆け出した。
「アヤ様、いけません。お戻り下さい!」
門番の人達の声が聞こえるけどもう止められない。早く会いたい。触れたい。
着物の裾が脚を広げるのを邪魔して早く走れない。少しだけはだけさせてさらに大股で走り出す。
必死で走ると、信長様達一行が見えてきた。
「信長様っ!」
聞こえたかどうかは分からないけど、叫ばずにはいられない。さらに必死で走ると、プツッと鼻緒が切れた。
「あっ」
その瞬間足を取られて、体が傾いた。
(転んじゃう)
痛みを覚悟して目を閉じると、
「アヤ」
勢いよく駆けてきた馬の音と共に、信長様の声が聞こえて、ぐいっと腕を掴まれて馬上へと引き上げられた。
「信長様っ!」
「アヤ、このじゃじゃ馬が」
「おかえりなさ..んっ」
有無を言わさず口付けられる。
「あのっ、のぶ.....んんっ」
恥ずかしいからと言おうとしたけど、開いた口の隙をついて舌が割り込んできた。
「んっ、ふっ」
馬は歩かせたまま、片手で器用に私を支えながら深く口づける信長様。また明日には色んな噂となってからかわれそうだけど、嬉しいが勝ってしまったから、そのまま身を任せた。
城門に着く頃には秀吉さんに咳払いされたので、私たちは笑いながら、唇を離し、一緒に門をくぐった。