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恋に落ちて 〜織田信長〜

第24章 痕付けの代償



「はぁ、何とか形になりました。信長様、上手には出来ませんでしたが、いっぱいいっーぱい無事でお帰りになる事を祈りながら、結びました。絶対に無事で帰ってきて下さい」

「ん、初めてにしては上出来だ。アヤ、行ってくる」

熱い口づけが落とされる。

「んっ、」

もう、秀吉さんはいない。私たちの行動を先読みするかのように、いつの間にか姿が消えていた。すっかり空気を読む達人だ。


「いつ、お帰りになりますか?」
唇が離れ、聞いてはいけないと思っていても、聞かずにはいられない。その言葉を頼りに、私は信長様を待つことが出来る。

「七日程だ。大人しく待ってろ」
私の頬を信長様の掌が優しく包み、もう一度口づけられた。


事の発端は数日前、同盟を結んだはずの大名がいきなり謀反を起こし、同じく同盟を結んだ隣の大名の国を乗っ取ろうと攻め入った。攻められた大名達は籠城を決め込み、命からがら放った使者が昨夜安土に援軍を要請してきた。
信長様は二つ返事で了承し、「あの大名には借りがある」と言って、自分で援軍を率いて行くことになった。

ここ最近、戦のない穏やかな日々が続いていたから、お城の中が戦準備で慌しくなって急に戦国時代の空気感に戻った様な感じだ。

「そんな不安そうな顔をするな。今日も[かるちゃーすくーる]とやらがあるのだろう?貴様が不安な顔をしていては、女どもの気持ちも不安にさせよう」

「信長様、ふふっ、カルチャースクールの事覚えていてくださったんですか」

信長様の口から現代のワードが急に飛び出して、ついつい笑ってしまった。

「貴様はいつもそうやって笑っていろ。では、いってくる」
信長様はニッと笑うと、私のおでこにキスをして秀吉さんと行ってしまった。

「っ、いってらっしゃい。どうかご無事で」

熱を与えられたおでこに手をあて、段々と遠ざかって行く信長様の背中をいつまでも見送った。


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