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恋に落ちて 〜織田信長〜

第23章 満月の夜





「こちらへ」

安土城の中は、迷路の様で迷い込んだら最後の様に見えた。

後にその呼び名を知る事になる天主に、女中さんに連れられて初めて足を踏み入れた。

「御館様、連れてまいりました」
女中さんが、土下座をする様な格好で、襖越しに声を掛ける。

「入れ」
低く、ピリピリした声が聞こえてくると、女中さんは体を震わせて私を見る。

「それでは、私はここで。後はアヤ様お一人でお願いします」
そう言うと、女中さんは逃げる様に天主から去って行った。

お一人でって、私も逃げたいのに。

襖の前でオロオロしていると、

「何をしておる、早く入れ」

焦れた様に襖が開き、信長様が姿を現した。

「つ、」

端正な顔に冷淡な笑み、鳥肌が立ちそうなほどの冷たい視線に体が強張る。

「遅い、待ちくたびれた」

腕を引っ張られて、強引に部屋に入れられた。

「あのっ、」

何かを話さなければと思い、言葉を出そうとするけど、怖くて何も言えない。

「表向きは、織田家縁の姫として扱ってやる。だが今は、貴様は俺の盃だ。だまって俺の相手をしろ」

顎をすくわれて、面白おかしそうに信長様は囁く。

「そっ、そんな事できません。私はお酒は飲めないんです」

「ふんっ、飲むのは俺だ。貴様はただ盃になれば良い」

そう言うと、私の口を強引に開けて、徳利からお酒を注ぎ込んだ。

「やっ、んっ、んぐぅ.........ぐっ..」
ごぼっ、ごほっごほっ、と流れ込んだお酒に喉が焼かれ、むせてしまった。

喉が痛い、酷い、飲めないって言ってるのに。

咳き込みむせていると、突然後ろから抱きしめられた。

(えっ?)

「本当に飲めぬのか。益々興味深い奴だ」

まだお酒にむせている私の顔を前に向かせて、不意に口を奪われた。

「んっ、んーーー」

柱に押さえつけられ、更に口づけを深くされる。

「んっ、くるっ......やっ」

顔を捩っても、胸を押してもビクともしない。
(怖いっ、私、どうなっちゃうの)

容赦なく角度を変えては絡める舌に、感情が支配されていく。

「やっ、はなしてっ、んっ」

不本意にも、体のチカラが段々と抜けていく。

「いやっ、んっ」

柱を滑る様にズルズルとチカラが抜けて立っていられなくなった。

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