第22章 帰路
「信長様っ!」
慌てて裾を捲り上げて丸太橋を渡る
「おかえりなさいっ」
馬から飛び降りた信長様に、丸太橋を渡りきった私は飛びこむ様に抱きついた。
「脚を見せるなと言ったのに、このじゃじゃ馬が」
私を抱き上げて信長様が苦笑いをした。
「もう、今日は会えないと思ってました。本物ですよね」
信長様に抱えられながら、信長様の顔にゆっくりと触れる。
「貴様は放っておくと何をしでかすか分からんからな。久しぶりに馬を飛ばしたわ」
力強く私を抱きしめる腕に、夢ではないのだと感じさせてくれる。
「信長様」
自然と顔と顔が近づいた時、
「あーコホン、俺たちもいる事、忘れないでくれよなアヤ」
秀吉さんに、光秀さん、政宗、家康まで、武将が勢揃いで私達をニヤニヤしながら見ていた。
「皆んな、来てくれたの?」
信長様から慌てて顔と体を離し、みんなに向き直る。
「アヤ、よく頑張ったな。後は俺たちに任せろ」
秀吉さんが優しく笑った。
「炊き出しの用意もして来たからな。後で美味いもの食わせてやる」
政宗も不敵な笑いを浮かべる。
「あんたにしては頑張ったんじゃない。褒めてあげるよ」
家康の最高の褒め言葉も聞けた。
「くっくっ、うちの御館様を使者として使いに出すのはお前くらいのものだ、大した策士だなアヤ」
可笑しそうに笑う光秀さん。これは、褒め言葉としてもらっておこう。
「蘭丸や三成達には他の村々の調査に向かわせた。とりあえずは、この周辺の村々の救助活動を優先的に行う」
信長様は家臣たちに命令を下す。本当にかっこいい。
「信長様、私はまだお手伝いする事があるので、信長様は休んで下さい」
信長様はどんな時も涼しい顔をしているからわからないけど、きっと、こんな短時間でこれだけの事をするのは大変だったに違いない。
「いや、俺は指揮に回る。貴様は貴様のできる事をしてやれ。後で会おうアヤ」
仕事モードに入った信長様は、私に一回微笑んで、秀吉さん達と行ってしまった。普段はあんなに甘々なのに、こんな時はやっぱり武将って感じでカッコいい。ついつい見惚れてボッーとしてしまうけど、
「いけないいけない、私も頑張ろう」
両頬を軽く叩き、気合いを入れ直して、村人の元へと戻った。