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恋に落ちて 〜織田信長〜

第21章 於市



夜になり、宴が始まり、私達は長政様夫婦と並びで上座へと座った。

長政様はじめ、浅井家の重鎮達が信長様の元へお酒を注ぎにやって来る。
信長様は次々盃を空にしてお酒を召し上がられる。

「アヤ殿、一杯いかがかな」
長政様が私にお酒を勧めてくれた。

「あっ、ありがとうございます」
盃に入れられたお酒を少しだけペロリとしてみるけど、やっぱり美味しくない。

「長政、此奴は酒が飲めん。アヤ無理はするな」
いつもの様に信長様の手が伸びて、飲み干してくれた。
そんな信長様に見惚れていると、

「アヤ、後は殿方にお任せして、私達は湯浴みに行きましょう」

お市様に湯浴みに誘われ、私は広間を後にした。




「疲れたでしょう?」
湯船に浸かりながら、お市様が話しかけてくれた。

「少しだけ。安土城の城下より外に出たのは初めてで、いきなりお市様と会う事になったので緊張しました」

「私の事は市でいいわ。私もアヤと呼ばせてもらっているし。ねっ」

「はいっ、では、お市。そう呼ばせてもらいます」

「外出したことが無いって、アヤはどうやって兄上様と知り合ったの?」
お市は興味津々な様子で聞いてきた。
未来から来たとは言えなかったけど、本能寺で信長様の命を助けた事、そこから信長様に安土城まで連れてこられた事を話した。

「そうなんだ。そこからどうやって恋仲になったのかは聞かないけど、兄上様が特定の女性を寵愛しているって噂を聞いた時は、信じられなかったし、連れて来るなんて思ってなかったから、今回は驚いたわ」
お市は本当に信じられないと言った風だ。

「私も昨日のお昼にいきなり聞いて、場所は今朝だったし、突然私も一緒に来て迷惑でしたよね」

「まさか、ずっとどんな人か気になってたから、会えてよかったわ。兄上様と連れ添うのは大変でしょう?」
心配そうな顔でお市が聞いてくる。

「信長様は、とても優しいです。反対に何で私なのかって思うくらい」

「兄上様の今までの非人道的な所業や、第六天魔王とまで呼ばれているのは知ってるの?」

「それも、知ってます。実際私はそんな信長様が怖くて許せなくて、逃げようとした事もあったから」
あの日の事は、一生忘れない。思い出すとまだ胸がチリチリと痛む。

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