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恋に落ちて 〜織田信長〜

第21章 於市



(信長様の妹君、どんな人なんだろう)
期待と不安と緊張が入り混じる。

「案ずるな、貴様と奴はきっと気が合う。俺が貴様に惚れたようにな」

私の気持ちを察したように、ぎゅっと抱きしめてくれた。


初めての旅路は、馬での移動に慣れていない私の為、茶屋でご飯を食べたり、見つけた花畑で寄り道をしながら、道中をゆっくりと進んだ。




私達が目的地の小谷城に着いた頃には、日も暮れ始めていた。

「立派なお城ですね」
安土城程ではないけど、小谷城も立派なお城だ。

「織田様、お待ちしておりました」
家臣の方が数名城門に出迎えにきており、馬を預けて大広間へと通された。

広間に行くと信長様は迷わず上座へと歩いて行き、腰を下ろした。
同盟国とは言え、信長様が上である事を示している。これは同じ同盟国の大名である家康達のお城に行ったとしても同じだ。でも、

「アヤ、何をしておる。来い」
既に脇息にもたれ、威厳オーラを出しながら、信長様が私を呼ぶ。

「いえ、私はここで」
部屋の一番片隅に正座して、ブンブンと手を振る。
(一介の普通人の私が、大名や姫様より上座にいくなんてとんでもない。安土では皆が優しく理解を示してくれてるから、申し訳ないながらも信長様の横に座らせてもらってるけど、本当はダメなことは分かってる)

「貴様は俺の連れ合いだ。気にせず来い」
信長様は尚も私に来るように催促をする。

「いえ、本当に、私はここで結構ですので」
手を更に横に振って、私も抵抗する。

「面倒臭い奴だな」
信長様が文字通り、面倒臭そうに立ち上がろうとした時、

クスクスっと、女の人の笑い声が聞こえてきた。

声の方を見ると、好青年風の武士と、長身の美女が並んで広間へと入ってきた。

二人は信長様の元へと行き座ると、頭を下げた。

「義兄上、ご無沙汰しております」
まず男性の方が頭を下げながら、挨拶をする

「息災であったか、長政。堅苦しい挨拶は抜きにして、頭を上げよ」

「ははっ、義兄上もお元気そうで」
男性が頭を上げると、女性の方も頭を下げて挨拶をした。

「兄上様、ご無沙汰しております。此度は遠路はるばるありがとうございます」

「市、貴様も元気そうで何よりだ。良く顔を見せろ」
信長様の顔が、優しい兄の顔になった。
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