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恋に落ちて 〜織田信長〜

第20章 交換条件



「.........つ、」
触れそうで、触れない距離で手を止めながらも、触れられてるみたいな感覚がしてきて、それだけで頬が赤らんでくる。でも、(ダメダメっ)気を強く持たなくちゃ。

「そんな事では誤魔化されません。シンの髪取りますよ」
パッと信長様の髪の上に付いているシンの髪を取る。

「私についてる毛が、飛んでったのかなぁ。信長様にシンの毛がつくわけないのに」
手に取ったシンの髪を見て、不思議に思いながら独り言を言っていると、

「ふっ、貴様はやはりいいな。全然飽きん」
優しい眼差しとともに見つめられる。

こんなに近くても、触れ合えないもどかしさで息が詰まりそうになる。
遣る瀬無さを胸にしばらく見つめ合っていると、

「あー、コホン。信長様、皆が揃いましたので」
秀吉さんが、軽く咳払いをして信長様に声を掛けた。

信長様は視線を広間の方へ向けた。

「今日も一日、よく励むが良い」
広間に威厳に満ちた声が響くと、
「ははー」と皆が一斉に頭を下げ、朝食を食べ始めた。

そのまま朝食が終わり、昼食、夕餉と、その日も一日が終わった。

信長様はもう何も言ってこない。私の事なんて本当にいなくても気にならないみたいだ。

シンの部屋へと行き、シンに抱きついて眠る。
その夜も不思議なことに、深い眠りに落ちる頃になると、シンからは信長様の匂いがして、優しく抱きしめられているみたいで私は安心して眠る事ができた。


そんな状態が三日続き、四日目の夜がきた。

「おいっ、アヤ!」
険しい顔の秀吉さんに呼び止められた。

「秀吉さん?」

「お前、まだ信長様の元に戻らないのか?」

「うん。外出許可を貰うまでは。私には大事なことなの」

「外出許可ってそんな事で....お前、信長様に守られてるから好きに過ごしていられるって分かってないのか?」

「分かってるよ。前回の事もすごく反省してるし、でもずっとお城で過ごすだけの日々は嫌なの」

「アヤ、俺らだって出来ればお前を自由にしてやりたい。だが織田軍は今緊迫した状況で、お前が出歩くのは本当に危険なんだ」

「秀吉さん.....でも」

「あーこんな事、本当は言いたくなかったけど、ここ最近、信長様は天主でお休みされていない」

中々言う事を聞こうとしない私に痺れを切らしたように、秀吉さんが少しだけ声を荒げた。

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