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恋に落ちて 〜織田信長〜

第20章 交換条件



「家康っ!今の聞いてた?」

てっきり誰も見てないと思ってたから.......

「聞いてたも何も、聞こえるでしょ普通」
口に手をあてて、吹き出すのを堪える家康。

「やっ、これは、あの......」
言い訳の言葉を必死で探すけど見つからない。

「あんたが大人しく謹慎できるなんて誰も思ってないよ」
肩をすくめながら家康が言う。

「えっ、そうなの?私ってどんな風に見えてるの?」

「好奇心旺盛で、向こう見ずで、無防備で、ふに
ゃふにゃしてる」

「それって、褒めてないよね?」

「どうかな。でも、あの信長様を焦らせる事の出来る唯一の存在でしょ」

「信長様が焦るわけないよ。どんな時でも余裕で涼しい顔してるもん」

「アヤが毛利元就にさらわれた時、大声で怒鳴るあの人を初めて見た」

私の横に腰を下ろしながら、家康は真剣な表情で言う。

「そう?信長様はいつも怒ってるよ?」
(正しくは、私は怒られてるよだけど)

「それはアヤは特別だから。あの人は、俺たちの前では感情を決して表には出さない。どんな窮地に立たされた時も、涼しく冷めた顔で決断を下す。だけどあの日は、感情のまま怒りを外に吐き出すような信長様だった。アヤの事だからこそでしょ」

「そっ、そうかな」
普段は天邪鬼な家康に正面から言われると、嬉しいような、くすぐったいような気持ちになる。

「そうだよ。だから、そこを攻めてみたら?」

「えっ?攻めるって何を」

「相変わらず、鈍いね、城の外に出たいんでしょ?だったら、ただ出たいって直接お願いするんじゃなくて、何かあんたが信長様に勝てるもので交渉するんだよ」

「勝てるもので交渉........................んー.................」

「呆れた。あの人と毎日一緒にいて、何もないわけ?」
家康がため息をつく。

「んーーーーーーない.........かも」

「はぁー、あんたってほんと鈍感って言うか、ばかって言うか、それじゃあ外出はいつまでたっても無理みたいだね」

家康が呆れながら言う。

「そうだよね。このままじゃだめだよね。私、もうちょっと良く考えて頑張ってみる。ありがとう家康」

「まぁ、頑張んなよ」
ふぅ、と家康がため息をつきながら手を振った。

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