第18章 金平糖の罠
「お前が先だ。生憎、口約束を信じる程お人好しじゃねえんだ。手形を貰おうか」
手先でピストルをクルクル回しては銃口を信長に突きつけ、元就は言葉を続ける。
「光秀、あれを」
信長が顔で光秀に合図を送る。
「はっ、ここに」
光秀が、一枚の手形を信長に渡す。
信長は、そのまま元就へと手渡した。
「これを使え。明日一日、この港を通る船は見逃してやる」
「へっ、第六天魔王とまで言われた奴がやけに素直じゃねえか。女一人に骨抜きにされちまって」
信長から素早く手形を奪い取り、銃口を左右に向けながら、退路を開いていく元就。
「てめえら、動くなよ。俺を殺せばお姫さんの命はない。」
ピストルで威嚇しながらジリジリと出口まで下がった瞬間、
ドカッドカッドカッと馬の蹄の音が近づいてきて、元就はその馬の手綱を掴んで飛び乗った。
「お姫さんはここの地下牢だ。信長、次会った時は貴様と殺しあう時だ。じゃあな」
手をひらひらさせニヤリと笑って元就は馬で駆けて行った。その後を兵達が追いかけようとするのを信長が止める。
「追うな、貴様らの手にはおえん男だ」
手で制し、兵達をその場に留めた。
「早速アヤを助け出しましょう」
秀吉が言うと、
「待て、」
信長は暫く考えた後、
「秀吉、光秀、」
二人を呼び寄せ、こそっと耳打ちした。
「ほう、」
光秀はその内容を聞いてニヤリと口の端を上げ、
「でも、それは」
秀吉は戸惑った表情を浮かべた。
「待ってろアヤ」
そう言うと、信長は不敵な笑みを浮かべた。