第17章 安土の休日② 〜湯浴み・褥編〜
天主に戻ると、夕餉の用意がされていた。
信長様は先にお酒を飲んでいる。
「お待たせしました」
信長様の横に座って、お酌をする。
こんな風にゆったりと二人で夜を過ごすのは本当に久しぶり。
トクントクンと胸の音は騒がしいけど、幸せな空気に包まれていて心地いい。
「信長様、今日一日、ありがとうございました。すごく楽しかったです」
お休みを取るのがどれだけ大変か分かってるから、本当に嬉しかった。
「礼をもらうのはこれからだ」
ツーっと私の唇を指でなぞる。
艶っぽく見つめてくる視線にクラクラする。
「ふっ、いいから早く食え。これ以上痩せるのは許さん」
「はっ、はいっ」
優しいんだか、強引なんだか、信長様の言動一つ一つに振り回される。
汁物を啜って、ご飯を口に運ぶけど、触れられた唇が熱くて味があまり分からない。
信長様は涼しい顔でさっさと夕餉を済ませ、脇息にもたれてお酒をまた飲み出した。
お酌をしようと徳利を持つと、
「いい」
手で制されて、私は再び食事を続けた。
信長様の視線を感じながらご飯を食べていると、
「飽きんな」
信長様は独り言の様に呟き、私の髪を一房手に取って遊び始めた。
「っ....あの、」
ただでさえ食べづらいご飯が更に食べづらくなる。
「気にせず食え」
髪を唇に押し当てながら食事を続けるように促される。
もう、味は全く分からない中、私は必死で夕餉を済ませた。
「ふっ、まるで犬のようだな、そんなにがっついては味が分からんだろう」
「だっ、誰のせいだと思ってるんですか!」
「あまり怒るな、ほら、また米粒がついてるぞ」
「うそっ」
慌てて口元に手をもっていくと、
「嘘だ」
その手をやんわりと掴まれ、口付けられた。