第16章 安土の休日②〜散歩編〜
走って城門まで行くと、
「ワンッ」
「きゃー、信(シン)会いたかったよー」
信長様が以前私に贈ってくれた犬と信長様が待っていてくれた。
犬(♂)の名前は、信長様の信の字をとって(シン)と名付けた。
シンは白くてふわふわな中型犬へと成長し、普段は犬部屋のような所と中庭で過ごしている。信長様のお部屋は重要な物が多すぎるし、私の部屋は針子部屋として使っていて、依頼品に犬の毛をつけてはいけないからだ。
シンは尻尾を振りながら、私の顔をペロペロと舐めてくる。
「くすぐったいよ。シンも今日を楽しみにしてくれてたの?」
ふわふわなシンの体に抱きつきながら頭を撫でていると、
「貴様の相手は俺だ」
信長様が怪訝そうに、私からシンを離した。
シンにはごめんだけど、こんな些細なヤキモチが嬉しくてたまらない。
「ふふっ、大好き」
秀吉さんにベタベタするなと言われた側から、信長様に抱きついた。
「行くぞ」
私の手から政宗のお弁当の入った荷物を取り、もう片方の手で私の手を繋いてくれた。
今日の目的は城下町を抜けた先にある湖の湖岸。
シンを目一杯砂浜の上で遊ばせてあげる予定。
「あのっ、信長様」
「もう、忘れたのか。町人の間はノブだ」
ニッと笑う信長様はやっぱりかっこいい。
「あのっ、ノブ...着物、着て下さってありがとうございます」
信長様が今日着ている着物は、私が仕立てた浴衣タイプの物。普段の信長様の着物は豪華なものすぎてプレゼントできないから、デートで町人に扮する時くらいはと思って、仕立ててみた。
「動きやすくていいな。今日みたいに暑い日にはちょうどいい」
「っ、」
嬉しすぎて、やっぱり抱きついてしまう。秀吉さんごめんなさい。
その後は、路面に広げられたお店に時々足を止めながら、たわいのない話をしながら歩いた。
(シンはちゃんとついて来てる)