第2章 棘
「なっ、何するんですか!」
小袖一枚にされ、怒る私をよそに、信長様は私の帯と着物を天主から外へ投げ捨てた。
「うそっ!」
足を引きずりながら、慌てて手摺りから外を見るけど、帯も着物もひらひらと舞うように、落ちていってしまった。
「その足ではどのみち動けぬだろう。今日一日、ここで大人しくしておれ」
愉快そうに笑いながら、信長様は秀吉さんと行ってしまった。
「何なの、一体」
部屋に一人、しかも現代で言う下着姿にさせられた私は、しばらく呆然として動けなかった。
その後、信長様の思い通りになりたくない私は、足に布を巻いて固定し、部屋に掛かっていた信長様の着物を拝借して、天主から逃げ出した。
自室に戻り、女中さんにお願いをして別の着物を用意してもらおうと思ったけど、また勝手なことをしたと言って処罰をされてはいけないと思い、仕方なく、投げ落とされた着物を探しに落ちた辺りの中庭へとやって来た。
棘は思っていたより深く、細かいものもたくさん刺さっていたから、取ってもらった後も、ズキズキ痛んで歩くのが辛い。でも、そんなことは言ってられない、広い中庭で私は信長様の着物を羽織りながら、着物探しを始めた。