第15章 花火
あまりの音の大きさに唇を離して花火の方を見る。
「あっ、枝垂れ花火」
大きな枝垂れが花火が夜空を覆うように垂れ下がった。
「あっ、」
一瞬、白く光り輝きながら垂れ下がり落ちていく枝垂れの中に、一筋の赤い光を見つけた。
「ほぅ、赤く光るとは、面白い花火もあるものだな」
信長様も何気なく口にした。
ふと、昼間の店主の言葉を思い出した。
『最後に打ち上げられる枝垂れ花火は見応えがありますよ。何でも、白く輝きながら落ちてくる枝垂れ花火の中に赤く輝く炎が現れるらしく、それを一緒に見る事ができた恋人同士は永遠に幸せになると言われておりまして、それを見たくて町中の娘たちは必死に支度をしているのでございます』
嬉しさと感動で、信長様にぎゅっと抱きつく。
「アヤ」
顎を持ち上げられ、何度目かの口づけが落とされた。
チュ、チュク、チュク・・
花火の音が無くなった部屋は二人の吐息と水音だけが聞こえる。
「んっ、ん」
深く、何度も角度を変え、呼吸を奪うような 口づけが続く。
(どうしよう、体が疼いてきた。口づけだけで終わりたくない)
熱に浮かされ切なさがこみ上げてきた時、
「まずいな、そろそろ軍議に戻る時間だが、ここで止められそうもない」
まるで私の心を見透かしたように、信長様も呟いた。
同じ気持ちでいてくれたことが嬉しくて、無言で信長様の胸元の襟をギュッと握る。