第15章 花火
「どうして?軍議は終わったんですか?」
想像の中のドキドキが本物のドキドキ感に変わっていく。
「いや、まだ続いておる。これを貴様に渡しに来た」
そう言うと、竹ぐしを差し出し渡された。
手に取ってよく見ると、
「これ、飴細工?」
竹ぐしの先には、小鳥の形に切り込みを入れた飴が刺さっている。
「政宗が、今すぐ貴様に持っていけとうるさく言うんでな」
「政宗が....」
あの後、買いに行ってくれたんだ。
こんな可愛い飴細工を政宗が買う姿を想像すると何だか笑えてくる。きっと周りの女の子達の視線を独り占めしてたんだろうな。
「政宗にお礼を言わなくちゃ。でも、可愛くて食べるのがもったいないくらい」
でも、ぺろっとひと舐め。
「んー甘くて美味しい。信長様もどうですか?」
隣に座る信長様の方に竹ぐしを傾ける。
「俺はこっちの飴でいい」
頭を引き寄せられて唇をぺろっと舐められた。
「っ、」
ドーーーーーーーーン
と打ち上がって花ひらく花火が私達を照らし出す。
「ふっ、この飴は甘くて赤いな」
ニッと楽しそうに笑う信長様に見惚れる。
こんなに好きで大丈夫なんだろうか。花火の音に負けないくらいに、心臓の音がドキンドキンと高鳴る。
ドーーーーーーーーン
バラバラバラ・・・・・
花火の音を聞きながら、私達は自然と唇を合わせた。
「っ....ん」
蕩けるようなキスに力が抜けそうで、手に握られた飴細工を落とさないように意識をそこに集中させる。
「そんな飴より、こっちに集中しろ」
信長様は私の手からするりと竹ぐしを取り、縁にトンッと軽く刺した。
「小鳥がこっちを見てるみたい」
縁に刺さった飴細工の小鳥がこっちに向いている。
「見せてやればいい」
再び唇を重ねた時、
ドドォーーーーーーーーン
一際大きな音の花火が打ち上がった。