第15章 花火
「信長様は、今夜も軍議があるのかな。」
独り言を言いながら歩き出す。
戦は、歴史で学ぶような大きな戦を想像していたけど、実際は隣国との小競り合いや、同盟国が攻め込まれて援軍を出すなど、小さな戦が後をたたない。
物資の確保、輸送、軍備の強化、兵力の強化など、織田軍の皆はいつも忙しそう。私のいた時代のように、土日休みがあるわけでなく不定休だ。
「お祭かぁ」
この時代のお祭りって、どんな感じなのかなぁ。勝手に城下を歩いてはいけないと言われてはいるけど、今日はお祭りで沢山の人もいるし、大丈夫そう。
「確か、神社の境内でって言ってたよね」
神社は、お城とは反対方向だけど、ちょっと見るだけならいいよね。
くるりと体の向きを変えて、歩き出そうとした途端、
「どこ行くんだ、アヤ?」
聞いたことのある声が聞こえてきた。
そろ〜りと振り返ると、
「政宗っ、どうしてここに?」
「ちょっと野暮用でな」
ニヤッと笑いながら、政宗が立っていた。
「そうなんだ」
もしかしたら、見張られてたのかなんて思ったけど、違ったんだ。
「じゃあ私は行くとこがあるからここで」
神社に行く事がバレないうちに政宗と別れようと思ったけど、
「だーかーら、どこ行くんだって」
逃げるように行こうとする私の着物の襟を掴んで引き止められた。