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恋に落ちて 〜織田信長〜

第15章 花火



この時代に残ると決めてから、一ヶ月がたった。

あの後、佐助君にも会って事情を説明した。
佐助君も上司の所に残るのだと言って、また遊びに来るねと笑ってくれた。

覚悟ができたのかは正直分からない。
戦も人を殺める事も怖いし、信長様が太平の世を築くまで、それは無くならない。
でも、あの時、信長様が差し伸べてくれた手を、もう手離したくないと思ったから。あの手を取って一緒に生きて行きたい。
だから、信長様に少しでも迷惑をかけなくて済むように、自分の身の回りの事くらいは自分でなんとかしたい私は、このところ、針子の仕事を請け負えるだけ受けていた。


「アヤ様、お待たせしました。こちらでございます」

店主が、反物を手に店の奥から現れた。

「はい確かに。では、また出来上がりましたらお持ちします」

そう言って、私は店主が持ってきた反物を風呂敷に包んだ。

「所で、今日は何かお祭りでもあるんですか?」
町の賑わいが気になる私は店主に尋ねてみた。

「ええ、夕刻頃からこの先の神社の境内で、夏祭りがあるのでございますよ。夜には川のほとりで花火も打ち上がります」

「わぁ、楽しそうですね。だからこんなにたくさんの女性で今日は賑わってるんですね」

「そうなのです。中でも最後に打ち上げられる枝垂れ花火は見応えがありますよ。何でも、白く輝きながら落ちてくる枝垂れ花火の中に、赤く輝く炎が現れるらしく、それを一緒に見る事ができた恋人同士は、永遠に幸せになると言われておりまして、それを見たくて町中の娘たちは必死に支度をしているのでございます」

「素敵ですね」
私も信長様と一緒に見たいなぁ。

店の中で、簪や帯飾りを選ぶ女性達はキラキラしていて楽しそう。大好きな人と一筋の赤い光を探すなんて、素敵だなぁ。

「アヤ様、申し訳ありませんが、私はこれで失礼させて頂きます。ごゆっくりしていって下さい」

店主はそう言うと、忙しそうにお客様の相手へと戻って行った。

私もお店の人達に挨拶をし、そのまま店を出た。


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