• テキストサイズ

恋に落ちて 〜織田信長〜

第14章 二人の距離 信長編



次の朝、秀吉は何やら騒いでいたが、俺はアヤを帰してやるつもりでいた。そう、あの時までは。


夜になり、光秀が珍しく寄越した間諜の女の大した事の無い報告を受けていると、

「信長様、アヤです」
アヤの声がした。

会うか否かと頭を一瞬悩ませる。
すると、女が突然ひれ伏して話し始めた。

「失礼ながら信長様、私が今夜ここに来た真の目的は、アヤ様をお引き止めする手助けをする為です。私にできる事がありますれば、何なりとお申し付けください。」

内容の薄い報告に光秀の寄越した艶やかな間諜、

「成る程な。光秀め、やりおるわ」
(お前も、アヤを手放すなと言うのか)

今朝からずっと、秀吉、家康、政宗、が次々にアヤを引き止めるよう進言してきた。そして光秀、お前までもがアヤを帰してはならんと。

「ふっ、ならば少し手伝ってもらうぞ」

「主からその様に言われております。仰せのままに」
間諜は静かに頭を下げた。


「入れ」

襖を開けアヤが入ってくる。

「のっ、!?」

俺と間諜の姿を見て声なく叫ぶアヤ

「っ、」
部屋を出ようとするアヤを引き止める

「アヤ、用事があって来たのだろう。終わるまでそこで待ってろ。命令だ」

アヤは今にも泣きそうな顔でその場にしゃがみ込んだ。

「宜しいのですか?」

「かまわん。貴様の手練手管を奴にも見せてやれ」

今少し、貴様の俺への想いを確かめさせてくれ。貴様を未来へ帰さなくていいのだと、確信させてくれ。恨み言は後で聞いてやる。今は、その愛しい顔が苦痛に歪む事が、唯一貴様の俺への想いの大きさを感じさせてくれる。

わざと、女と絡むように褥で戯れるフリをする。

暫く息を殺して座っていたアヤは、限界を迎えたように目を逸らし、部屋から出ようと、立ち上がった。

(もう、逃がさん)

「んっ...」
アヤの片手を掴み、口づけた。
/ 816ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp