第14章 二人の距離 信長編
「アヤ」
呼んでも振り向かない。
「体調が優れぬと聞いたが、何故ここで寝ておる」
か細い肩が震えているのが分かる。
「アヤ」
髪を撫でると、予期せぬ言葉が来た。
「けっ、顕如は、どうなったんですか」
「彼奴は逃げ、寺の者共は焼き討ちとなった」
「焼き討ちって、皆殺しにしたんですか?」
身体を起こして俺を見るアヤ。少し会っていなかっただけなのに、酷く痩せたように見える。
「そうだ、逆賊である奴を匿い、この俺に楯突いた罪は重い。当然だ」
「当然って、いっ、一向一揆でも、子供や女の人でも容赦なく納屋に押し込め火を放ったと聞きました。そっ、それは本当ですか?」
(何を怒っている)
「何が言いたい。貴様の甘っちょろい考えなど聞いておらぬ」
(貴様はそんな事気に病む必要はない。俺だけを見ろ)
顎を持ち上げて口づけようとすると、
「んっ、やめっ、やっ、触らないで!」
「どうしたアヤ。戦話で気持ちが高ぶったか」
「ちがっ」
(何を震えている、今すぐ不安を取り除いてやる)
褥に押し付け着物の袷に手を入れる。
アヤはまるで媚薬のようだ。一度触れるともうその手を止めることはできない。
「やっ、んっ、信長様っ、いやだ」
「戦の話など忘れて、ただその身を委ねていろ」
「やめっ.....あっ」
抵抗をされればされる程、衝動は抑えられないもので、アヤの弱い所を少し攻めれば、たちまちその身体は濡れ開かれていく。
ただこの時のアヤは、声を殺し、褥を握りしめて、必死に耐えているようで、苛立ちが募った。