第14章 二人の距離 信長編
戦から戻り、広間にアヤの姿がないことに心がざわついた。自分の寵姫であるアヤは日々危険に晒されている。いつアヤを人質にと攫われてもおかしくはなかった。
日々政務に追われる信長がアヤのそばに四六時中一緒にいることはできない。
自室として使わせていた部屋は、城の一番奥の忍び込みにくい所とは言え、腕の立つ者なら容易に入り込める。また、城内に裏切り者がいないとも限らない。だからこそ、天主にアヤを住まわせその安全を確保していたのだ。
城の外から一歩も出さずにおけるならそうしたかったが、アヤは全然じっとしてはいない。そこがまたアヤの魅力でもあるのだが、頭を悩ませるところでもある。
針子仕事や女中達の手伝いを再開させて欲しいと頼まれた際も、毎朝目覚めたら、アヤから口づける事や、湯浴みはなるべく一緒にするなど、アヤの嫌がりそうな条件ばかりを冗談でつきつけたが、アヤは目を見開いて口をパクパクさせ暫く考え込んだ後、はにかむように、小さく頷いた。(その姿に唆られ、すぐに抱いたのは言うまでも無い)
兎に角、あらゆる手段でアヤを守っているのに、あの日は広間に顔を出さない。しかも体調が悪く自室で寝ていると聞き、居ても立っても居られなく部屋へ行った。