第2章 棘
「はっ、直ちに」
秀吉さんも腰の刀に手を置いて、立ち上がろうとしている。
「まっ、待って下さい。私は何ともありません。こんなのすぐに治ります。そんなひどい事、しないで下さい」
慌てて信長様にお願いする。
「アヤ、貴様は阿呆か。貴様は俺の物。その俺の物を傷つけた罪は重い。」
「そんなっ!こんな怪我でそんな重い罪に問うなんて、おかしいです。それに、私はあなたの物ではありません」
広間に緊張が走る。
信長様が、私を鋭い眼で睨む。
怖くて身体中が震える。
「ひっ、人の命は平等です。失敗は誰にでもあるし。私が怪我をしたのは、私の不注意であって、誰のせいでもありません」
「ふんっ、貴様の甘っちょろい意見など聞いておらん。秀吉、行けっ!」
「はっ」
秀吉さんが立ち上がり、広間を出ようとする。
「待って、秀吉さんお願い。待って」
「アヤ」
秀吉さんが足を止めて振り返る。
「信長様、お願いです。私にできる事なら何でもします。命を、足を奪わないで下さい。」
「ほぅ。何でもとな?」
ニヤリと顎に手を当てて信長様が私を見る。
「はい。ですからお願いです。お咎めは無しに」
体も震えるけど、声の震えも止まらない。
「よかろう。秀吉、下がれ」
「はっ」
秀吉さんは、頭を下げると自分の膳へと戻って行った。