第13章 二人の距離 後編
次の日の朝。
最後の朝餉をみんなと食べるため、広間へ向かった。
「おはようございます」
広間に入ると、私の膳は信長様の横ではなく、初めての時のように、末席に置かれていた。
秀吉さんが慌てて私のところにやってきた。
「おい、アヤ、どうなってんだこれ?」
「秀吉さん」
心配そうな秀吉さんの顔。いつもたくさん面倒見てくれたのに、裏切ってごめんなさい。
「秀吉、アヤは明日、国元へ帰る。途中まで貴様が送ってやれ」
上座から信長様が声を掛ける。
「なっ、本当なのか?」
秀吉さんだけでなく、広間にいる全員が同じような顔をしてこっちを見ている。
「本当です。短い間でしたが、みなさんお世話になりました」
畳に正座をして手をつき頭を下げる。
秀吉さんはまだ納得のいかない顔で自分の席へと戻って行った。
その後の朝餉の時間はまるでお通夜のようで、ご飯の味はまるで分からなかった。