第1章 再会
階段を降りると、真白ちゃんが不機嫌そうにクッションを蹴っていた。
真白ちゃん愛読のレストラン特集が載ってる雑誌も無造作に床の上に落ちているし。
げしげしげし。
猫がよくやる猫キックである。
「こら、雛。せっかく遅刻をしないように真白ちゃんが起こしてくれたのに」
お母さんがため息をついた。
死んだ相手と比べられるのは嫌だよね……。
『……ごめんね、真白ちゃん。昔の真白ちゃんの夢を見ちゃって』
真白ちゃんはこっちを一瞥した後にまたげしげしとクッションにストレスをぶつけ続ける。
『私の一番の相棒は今の真白ちゃんだよ』
真白ちゃんの動きがぴたっと止まった。
『確かに、前の真白ちゃんも大切だけど一緒に戦えるのは今の真白ちゃんだけ。ヒーローになろうって思ったのも今の真白ちゃんのおかげ』
真白ちゃんは蹴るのを止めるとニコニコと笑い、満足そうに頷いた。
そしてしっぽをピンと立てると移動用鞄の中に入っていく。
私はその小さいけれどたくましい背中が見えなくなるまで見守ってから、鞄を持つ。
「朝ごはんは持ってく?」
『うん、お願い』
こうして、私はおにぎりを食べながら雄英高校の試験に向かうのだった。