第2章 新しい生活の前に
河原に向けて二人と一匹でのんびり歩いていく。
こうしてると、引っ越し前に戻ったみたいでちょっと楽しいな。
「懐かしいねーあの河原。僕らの家族皆でピクニックをした河原だよ」
『そんなことあったっけ?』
「うん、幼稚園に行く前で丁度出会ったばかりの頃かな。まだ昔の真白ちゃんもいなくて、雛が犬のぬいぐるみを大事そうにしてた頃」
『犬のぬいぐるみ……?』
「うん、今の真白ちゃんの犬バージョン。覚えてない?」
うーーーん、全然覚えてない。家族で河原にきた覚えはうっすらとある程度で……。
『覚えてないなぁ……』
「さっき話したピクニックのときに大事なぬいぐるみを川に落としたから、新しいぬいぐるみを作ろうって話になって、自分で作ったんだよ」
『へー。刺繍の初歩勉強だと思ってた』
「それは、上手になったら刺繍も教えてあげるって言われただけ。それに雛ちゃんは目を縫い付けただけでほぼおばさんが作ってたような」
『あ、それは覚えてる!記憶力がいいねぇ、いっちゃんって』
「そうかなぁ?」
『うん、そうだよ!』
楽しく昔話をしてると、河原でトレーニングをしてるかっちゃんの姿が。
「わわっ、かっちゃん!?」
びくっといっちゃんの体がこわばる。
これは、止めたほうがいいなぁ。
『ありゃりゃ、苦手?』
「う、うん。ちょっと……かか、帰ろうかな……」
苦笑してるいっちゃんを見てつくづくかっちゃんの態度に嫌気がする。流石に追い詰めすぎでしょ。
私は、箱にシュークリームを2つ入れて手渡す。
「え、いいの?」
『うん、また今度ゆっくりお茶でもしよっか』
「じゃあうちで食べない?」
『あ、いいねぇ!』
こうして、私は河原で一人トレーニングをしてるかっちゃんを置いていっちゃんの家に行くことに。