君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第11章 pesante
「あんなあ…、お前と何年付き合ってると思う?」
入社式の日に、たまたま配属された部署が同じだったことから意気投合して以来だから、かれこれ三年の付き合いになる。
松本の考えてることなんて、わざわざ聞くまでもなく分かる。
まあ、たまにその脳ミソをかち割って、頭ん中覗いてみたくなることもあるけど…
「じゃあ“例のアレ”はまだ役に立ってない、ってことか…」
“例のアレ”ってのは、おそらくあの“例のDVD”のことだろう。
「見るには見たんでしょ?」
「まあ…、チラッとは…」
「どうだった? 少しは参考になった?」
参考になったも何も…、それが原因で危うく俺は智に…、ってのは今は伏せておくことにしよう。
松本を喜ばせるだけにもなり兼ねないからな(笑)
「まあ…行為自体は何となく…な?」
実際、その手の情報はネットやなんかで検索すれば、何重ものオブラート包んだモノやら、現実重視のモノまで、驚かく程溢れている。
勿論、松本から借りたDVDなんかよりも、もっと過激な動画なんかも同様に…
だから俺も、全くその世界のことを知らないわけでもない。
「ただやっぱさ、自分をそこに置き換えて考えると…、正直怖くなるっつーかさ…」
「だよね…。俺はさ、どっちもイける口だからさ、どっちの気持ちも分かるけど、俺の場合は元々ノーマルな人間じゃないからさ…」
そうなんだよな…、って…
「え、ええっ…!? どっちも…って、お前…そうだったの…か…?」
「え? 俺言ってなかったっけ? 俺、ネコもタチもどっちもOKなの♪ ビックリした?」
いや…、ビックリも何も…、衝撃だった…っつーか…
「多分智もそうなんじゃない? アイツ、自分では根っからのタチだって言ってるけど、それは抱かれる喜びみたいなのを知らないだけでさ、一度抱かれたら変わんじゃないかなって…」
そんなモンなの…か…?
俺にはもう良く分かんねぇよ…
「ハ、ハハハ…」
笑うことかしか出来ない俺は、グラスのビールを一気に飲み干すと、コールボタンを押して、追加のビールを注文した。