君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第26章 番外編☆dolce
帰ってからずっと開けっ放しだったせいか、部屋の空気が酷く冷たく感じて…
「窓…閉めるね…」
俺が立ち上がろうと、膝を抱えていた手を解いたその時、
「智…」
呼び止められ、振り向いたと同時に、俺は翔さんの腕に包まれていた。
「翔さん? 窓…閉めないと…」
この辺りは夕方を過ぎると、気温がグンと下がるってこと、翔さんだって知らないだろうに…
「少しだけ…。少しの間で良いから…」
「後で風邪引いたとか言わないでよ?」
「言わないよ。それにこうしてれば暖かいから…」
確かに翔さんの言う通りだ。
触れた合った部分から翔さんの体温が伝わって来て、部屋の温度はどんどん下がって行くのに、俺の体温はどんどん上がって行く一方で…
「ホントだ…」
俺が笑うと、翔さんが自信たっぷりに「だろ?」って笑った。
そして俺の肩に顎をコツンと乗せると、小さな声で「ごめんな…」と俺の耳元に囁いた。
「何が? 何で翔さんが謝るの?」
「本当はさ、二人で決めるべきことだったんだろうけど、俺が全部勝手に決めちゃったからさ…」
なんだそんなこと…
「そうだね…、一言相談して欲しかったかな…。でも俺、信じてるから」
翔さんが大きな決断を下す時には、必ず大切にしたい存在がそこにあることを…
そしてそれが“俺だった”ってことも。
だからこそ俺は、翔さんの想いに全身で応えたいと思うし、翔さんを信じたいとも思う。
“絶対”…なんて補償はどこにもない。
それでも、俺達の出会いが奇跡であったように、小さな奇跡を一つ一つ拾い集めながら、一緒に歩いて行けたら…
そしたらいつの日か、俺達の出会いが奇跡なんかじゃなかったと…
俺達は出会うべくして出会ったんだと…
運命だったんだと…、そう思える日がきっと来る。
だからその日まで…
この先もずっと、俺は俺らしく、泣いたり笑ったりしながら、貴方と共に…
『番外編☆dolce』ー完ー