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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第11章 pesante


“取り敢えず”のビールがそれぞれの前に運ばれ、俺達は当たり前のようにグラスを軽く合わせてから、乾いた喉に冷えたビールを流し込んだ。

「ああ、美味い!」

満足気にグラスを傾ける松本。

でも俺にはちょっと物足りない。

やっぱりビールは洒落たグラスなんかじゃなく、手首にズシッと感じるジョッキの方が、俺的には好み…と言うか合ってると思う。

次々テーブルの上に所狭しとならべられる料理にしてもそうだ。

デカい皿の真ん中に、センス良く盛られた横文字の料理より、大皿にドンと盛られた煮物や、炭火で焼かれた焼き鳥の方が好みだ。

ま、腹に入ってしまえば、どれも同じなんだけど(笑)

「で、話って?」

松本がオーダーした料理も全て揃い、追加のビールも届いた所で、俺の方から口火を切った。

松本がこうして俺を誘って来るのには、必ず理由がある筈だ。

なのに松本と来たら…

「何が? 俺、別に話とかないけと?」

濃い顔に爽やかな笑顔を浮かべて、シレッと言いやがった。

あまりにもサラッとした口調に、じゃあ何で俺を誘った?、と言ってやりたい所だったが、やめておいた。

松本の誘いがなければ、こんな店に来ることもなかったし、何より俺自身一杯飲みたい気分だったから…

ま、相手は松本じゃなくても良かったんだけど(笑)

「あ、そう言えば智とは? あれから会ってんの?」

「まあ、それなりに?」

「ふーん、じゃあさ…」

松本が料理の並んだテーブルに両肘を着き、ニヤリと意味深な笑いを浮かべた。

その顔を見ただけで、松本が何を言いたいのかが分かる。

だから俺は、松本が口を開く前に、

「お前が期待するようなことは、何もしてねぇよ」

先手を打った。

すると松本は、それまで興味津々だった松本の表情が一転、その端正な顔立ちも台無しになるくらいの、見事な膨れっ面に変わった。

ったく…、子供かよ(笑)
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