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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第8章 a cappella


どれだけ泣いたんだろう…

ズッと鼻を啜ると、鼻の奥がツンと痛んだ。

「少しは落ち着いた?」

頭上から降ってくる声に顔を上げると、櫻井さんの優しい笑顔があって…

マジか…

その時になって漸く、自分の手が櫻井さんの背中に回っていたことに気が付いた。

無意識だったとはいえ、恥ずかし過ぎる状況に、俺はパッと身体を起こそうとしたけど、俺を抱き締める櫻井さんの力が思いのほか強くて…

結局俺は櫻井さんの胸に引き戻されてしまう。

背中をポンポンと叩かれ、櫻井さんの胸にビタリとくっつけた耳から聞こえる、櫻井さんの心臓の音を聞いていると、どうしてだろう…凄く落ち着く。

と、同時に襲って来る睡魔に、俺は涙を拭うフリをして瞼を擦った。

でもそんなの櫻井さんには全部お見通しで…

「沢山泣いたら眠たくなっちゃった…かな?」

まるで小さな子供に話しかけるような口調で言われ、俺は咄嗟に首を横に振るけど、すぐに小さく頷いて見せた。

「そっか…、じゃあもう時間も遅いし…そろそろ…」

そう言ってベッドの片隅に置かれた時計を見た櫻井さんが、次に何を言おうとしているのかなんて、聞かなくたって分かる。

『帰らないで…』

俺は心の中で呟きながら、櫻井さんの背中に回した腕に力を込めた。

「大野…君…?」

少し困ったような声…

「えっと…、そんなにキツく抱きつかれたら俺…、帰れなくなっちゃうんだけど…」

『だって帰したくないんだもん…』

俺は更に力を込めた。

一瞬、櫻井さんの口から「ぐぇつ…」って声が漏れたような気もするけど、関係ない。

こうなったら、櫻井さんが「YES」と言うまで、絶対この腕を離すもんか!

っていうか、櫻井さんて…、真面目な人だとは思ってたけど、案外頑固なんだね?

ま、俺も頑固さでは負けてないけどさ(笑)
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