君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第26章 番外編☆dolce
翔さんがゆっくりと席を立つ。
そして俺が座る椅子の横に跪くと、俺の手からリングを取り上げた。
「どっちが良い?」
「えっ…?」
「だから、首か指か…、どっちが良いの?」
どっち…って聞かれたって、どう答えたら良いのか分からない俺は、ただ顔を赤くして翔さんを見つめることしか出来なくて…
「智が答えられないなら、俺が勝手に着けるけど…、それでも構わない?」
俺は翔さんの提案に、無言で頷いた。
すると翔さんは「分かった」と小さく答えてから、リングをチェーンから外すと、俺の左手…薬指を握った。
「翔…さん…?」
俺が名前を呼ぶと、翔さんは少し照れたような表情を浮かべて、俺の薬指に唇を押し当てた。
そして静かに俺の指にリングを通すと、
「永遠…なんて、もしかしたらないのかもしれない。でも誓うよ…いや、誓いたい…」
「何…を…?」
「俺は智をこの先も愛し続ける。例え俺達の関係が変わったとしても、それでも俺はお前を愛し続ける」
「翔…さん…」
「約束する。だから…、俺に着いて来いとは言わない。でも、一緒に歩いていかないか? この先も二人で…」
一言一言に、翔さんの決意みたいな…いや、きっとそんな簡単なモンじゃないんだろうけど、強い意志を感じて、俺の胸が熱くなる。
そして胸の熱さはやがて、熱い涙になって俺の頬を濡らした。
泣くつもりなんてなかったのに…
「本当に泣き虫だな、智は…」
そう言われるって分かってたから…
だから泣きたくなかったのに、俺の意思に反したように涙が溢れて止まらなくて…
「翔さんが悪いんだ…」
俺を泣かせるようなことばっか言うから、だから…
「もう…、翔さんなんて…」
「うん、俺なんて…、何? 言って?」
翔さんがその先を期待するように、笑顔で俺を見上げる。
だから俺は翔さんの耳元に唇を寄せ…
「翔さんなんて大嫌い…。でも…大好き…」
そう囁いてから、翔さんの撫でた肩に両腕を回した。