君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第26章 番外編☆dolce
「もう、信じらんねぇ…」
「だから、ごめんてば…」
普通あの場面で腹鳴らす?
せっかくの良い雰囲気が台無しだよ…
「仕方ないだろ? 智は相葉さんのチャーハン食ったかもしんないけど、俺朝食ったっきり、何も食ってないんだから…」
それにしたってだよ…
ったく、ムードの欠片もないんだから…
全面ガラス窓の向こうに広がる夜景を背に、翔さんが俺に向かって両手を擦り合わせる。
ついさっきまで、あんなに格好良かった筈の翔さんは、今はどこにもいない。
ひたすら申し訳なさそうに肩を落とし、眉を思い切り下げた、ちょっと頼りなささえ感じる翔さん。
でも…
そんな翔さんも、やっぱり好きで…
「許して上げる。でもその代わり、一生俺のこと大事にするって約束してくれる?」
俺は翔さんがNOと言えないことを知りながら、交換条件を出す。
すると翔さんは、
「当たり前だ」
急にキリッと顔を引き締め、スーツのポケットから取り出した小さな箱を、俺の前に差し出した。
「な…に…?」
「約束の印だ」
「へ?」
「智を一生大事にするって、約束の印」
だから受け取って欲しい…と、戸惑いを見せる俺の目の前で、翔さんが引き締めた顔を更に引き締める。
「真剣に…言ってる?」
「俺は、智の前ではいつだって真剣だよ?」
「あり…がと…」
俺は震える手でその箱を受け取ると、やっぱり震える手で蓋を開けた。
キラリ…と光るシルバーのリングにはチェーンが通されていて、指でリングを摘むと、チェーンがシャラッと音を立てて揺れた。
「気に入った?」
気に入るも何も…
「俺…、こんなの今まで貰ったことないし、何て言って良いのか…」
思いがけないプレゼントを前に、戸惑うことしか出来ない俺の目の前で、翔さんが引き締めた顔を綻ばせた。