君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第26章 番外編☆dolce
「俺、翔さんが異動になってから、暫くの間雅紀さん家に居候してたでしょ?」
その時思ったんだ…
雅紀さんが潤さんのために、どれだけ尽くしてるか…
雅紀さんが潤さんのことを、どれだけ支えてるか…
俺はずっと間近で見てきた。
だから思うんだ…
「俺は雅紀さんみたいに、翔さんのに尽くすことも出来ないし、傍て支えることも出来ない、って…」
少なくとも今の俺では…
「そんな…、俺は智に尽くして貰おうとか、ましてや支えて貰おうなんて、一度も…。ただ、傍にいてくれさえすれば、それだけで…」
「分かってるよ…、分かってるけどさ、それじゃ駄目なんだよ…、それじゃ…」
「何が駄目なの?」
「分からない…。分からないけど、とにかく今の俺じゃ、翔さんに甘えるばっかで、結局翔さんの負担になるだけじゃん…。だから俺は…」
たとえ届かなくても、毎朝ベランダに出る翔さんに「おはよう」って言って、翔さんが家に帰る頃には「おかえり」って言って…
それだけで十分だった。
それしか今の俺には出来ないから…
「じゃあさ、いつなら良いの?」
「えっ…?」
「いつまで待てば、智は自分が納得出来る自分になれるの?」
「それ…は…」
思いがけない問いかけに、答えに戸惑ってしまう。
“いつまで”なんて、正直考えたこともなかった。
ただ漠然と、今の自分では、翔さんの恋人として相応しくないって…、そう思っていたから…
だから、“いつまで”なんて聞かれたところで、到底答えられる筈なんてなくて…
俺は膝の上で握りしめた手に、ギュッと力を込めた。