君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第26章 番外編☆dolce
「ねぇ、智?」
明確な答えが出せないまま、ただ俯くことしか出来ない俺の頭に、翔さんの手がポンと乗せられる。
「智は自分のことまだまだだって思ってるかもしんないけど、それってさ…、俺も同じなんだよ?」
「翔…さんも…?」
そんなことない…
だって翔さんは…、そりゃちょっと頼りない所はあるけど、いつだって優しくて、大人で…
俺みたいに適当に生きて来た人間とは違って、真面目で…
だから俺と同じだなんて、絶対にありえない。
「違うよ…、俺と翔さんとでは全然違うよ…」
「そんなことないよ、同じだよ?」
否定する俺に、翔さんが苦笑を浮かべて首を振る。
「智はさ、俺のこと“完璧な人間”だって思ってるだろ?」
「…うん」
「それで、自分のこと“未熟な人間”だって思ってるだろ?」
「う、うん…」
「だけどさ、完璧な人間なんて、実際存在しないんだよ。皆、どこかしら未熟で、何かしらの欠陥があって…。だから、完璧とか完璧じゃないとか…、関係ないんじゃないかな?」
「翔さん…も…?」
俺が聞くと、翔さんは苦笑を浮かべた顔を綻ばせ、「勿論だよ」と笑った。
そしてベッドの端に腰をかけたまま、俺を背中から抱きしめると、フッと息を吐き出し、
「例えばさ、智の事が好き過ぎて、ついつい我儘になってしまうところや、智の事が大切過ぎて、さっきみたいにイライラしちゃったりさ…、全然完璧なんかじゃないよ…」
自嘲気味に笑った。
そして背中から回した手を俺の顎先にそっとかけると、そのまま俺の顔を引き寄せ、
「それから…。智の傍にいると、キスを我慢出来なくなるところもね?」
俺の唇に自分の唇を重ねた。