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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第26章 番外編☆dolce


楽しい筈の、雅紀さんと潤さんとの再会は、潤さんの余計な二言で、見事に空気が一変した。

腕組みをした翔さんの眉間には深い縦皺が刻まれ、雅紀さんに二発目の肘鉄を食らった潤さんは、腹を抱えて蹲っている。

そして、その三人に囲まれた俺はと言うと…

どうにも出来ないバツの悪さに、ただただ正座をした膝の上で握った両の拳を見下ろすしかなかった。

「どうして言ってくれなかったの?」

若干の怒気を孕んだ声に、俺の両肩がビクリと揺れた。

「それは…、その…、なんつーか…」

言いかけた時だった。

「あれ? 智さんじゃないですか! 久しぶりっすね」

早番のバイト君が、まだオープン前の暖簾を潜ると同時に俺を見つけ、俺達のテーブルまで駆け寄って来た。

「あ、ああ、久しぶり…」

適当に返事を返し、俺は救いを求めるように雅紀さんに視線を送った。

自分の思いも上手く言葉に出来ず、ただただ無言で責め立てられているような…

そんな状況から、逃げ出したくてたまらなかった。

雅紀さんはそんな俺の心中を察してか、

「ホテル…とってあるんですよね?」

翔さんに向かって問いかけた。

「え、ええ、まあ…」

「じゃあさ、後は二人で良く話し合ったら? 二人の問題ださ…。その方が智も良いだろ?」

何か言いたげに身を乗り出す潤さんを肘鉄で制しながら、雅紀さんが翔さんに提案する。

「そう…する?」

雅紀さんの提案に、翔さんが溜息混じりに俺の顔を覗き込む。

俺はそれに黙って頷くと、“分かった”と言ってコートを手に席を立つ翔さんの後を追うように、俺もコートとキャップを手に席を立った。

「なんか…ごめん…」

店の外まで見送ってくれた雅紀さんに詫びると、雅紀さんは静かに首を横に振って、

「ほら、置いてかれるよ?」

俺の背中を優しく押してくれた。
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