君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第26章 番外編☆dolce
「この後松岡先生の所にも寄るんだろ? だったらそろそろ…」
俺の肩から腕を離し、雅紀さんが腰を上げる。
ずっと膝に負担のかかる格好でいたからか、雅紀さんが膝の曲げ伸ばしを何度か繰り返す。
「オヤジくせーの…(笑)」
「う、うるさいなぁ、もぉ…。ほら、行くよ?」
俺を墓石の前に残し、雅紀さんがスタスタと建ち並ぶ墓石の間を、山門に向かって歩き出す。
「ちょ…、待ってよ…」
俺は慌てて腰を上げると、もう一度…今度は墓石を見下ろし、
「また来てやるから…、それまで寂しいかもしんねぇけど、待ってろよな?」
ニノにそう語りかけると、ジンジンと痺れる足を引き摺るようにして、雅紀さんの後を追った。
あんなにキツかった石階段を、遥か先に見える雅紀さんの車へと向かって下る。
登りよりも下りの方が数倍キツい、ってのは聞いたことがあるけど、実際にそうかもしれない。
勢い良く下っていた石階段も、残り数十段を残した頃になると、膝がカクカクとし始め…
「…っぶね…」
踏み外してしまいそうになる。
それを見て、雅紀さんがここぞとばかりに声を上げて笑う。
「人のこと笑ってらんないね、智も(笑)」
「う、うるせぇ…」
つか、さっき山門を潜る時に気付いたことなんだけど…
「ねぇ、上にも駐車場あったけど、ひょっとしたら上まで車で行けんじゃねぇの?」
停まっている車こそ無かったけど、確かに“参拝者専用”の看板が掛けられていた。
「え、嘘? マジで?」
「え、もしかして気付いてなかった…とか…?」
「うん、全然…」
嘘…だろ…?
「だって何回も来てんでしょ?」
なのに今まで気付いてなかったとか…、ありえねぇ…(笑)