君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第26章 番外編☆dolce
あんなに冷たいと感じていた風が、不意に暖かな物に変わった。
それは俺だけじゃなく、雅紀さんも同じように感じてあたようで…
「和也の奴、智のこと待ってたのかもね?」
俺の隣で、墓石を見上げて雅紀さんがポツリ呟く。
俺はそんなことないと思いながらも、心の片隅ではその言葉を信じたい気持ちもあって…
雅紀さんと同じように、目の前の墓石を見上げた。
「ねぇ、雅紀さん?」
「ん?」
「俺さ、ニノのこと好きだったよ」
「うん、知ってる」
「勿論、翔さんに感じる“好き”とは、ちょっと種類が違うっていうか…さ、上手く言えないんだけど、すげー好きだった」
多分、その気持ちは今でも、そしてこれからも、何があったとしても変わることはない。
「アイツさ、すげーひねくれてるし、素直じゃねーし、一度拗らせると面倒くせえしさ、ゲームばっかやってて、俺の話なんで聞いてくんねぇし、頑固…なのは俺の方が多分勝手ると思うけど、とにかく一緒にいて全然楽しいと思ったことは無かったけどさ…」
でも俺は…
それでも俺は…
「ニノが好きだった…、一緒にはいられなくても、ずっと…」
生きていたかった…、生きていて欲しかった。
込み上げて来る感情に、目頭が熱くなる。
俺は泣き顔をニノに見られたくなくて、キャップのツバで濡れた頬を隠した。
「和也はさ、不器用な奴だったから、本心は絶対口にはしなかったかもしんないけどさ…」
雅紀さんの腕が俺の肩に回され、そっと引き寄せられる。
「同じだったんじゃないかな、智と…」
「俺と、ニノ…が…?」
「うん、俺からしたら、二人共似たようなもんだよ…」
肩に回した手で俺の肩をポンポンと叩きながら、雅紀さんがクスリと笑った。