君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第26章 番外編☆dolce
無数に建ち並ぶ墓石の中に、“相葉”の名を探す…けど、中々見つからなくて…
「なあ、何度も来てんだろ? 何で場所覚えてないの?」
俺は深いため息を一つ落とした。
「仕方ないだろ? どれもこれも同じような形してんだし…」
そりゃそうだけどさ…、それにしたってだよ?
自分家の墓の場所くらい、普通は覚えてるだろうに…
「何かさ、目印とかないの? ほら、例えばデカい木が立ってるとかさ…」
「目印ね…、そうだなぁ…」
雅紀さんが腕を組んで、暫くの間考え込む。
でもその顔は全然考えてる様には見えなくて…
「取り敢えず探すか…」
当てにならないと踏んだ俺は、雅紀さんをその場に置き去りに、建ち並ぶ墓石を一つ一つ確かめながら、そう広くもない霊園の中を歩き回った。
そして、
「あった…、雅紀さん、ここ…」
漸く見つけた“相葉家”の文字を前に、未だ考え込む雅紀さんに向かって手招きをした。
雅紀さんから受け取った線香の束を、墓石の前に置く。
線香から立ち上る煙は、一瞬宙をさ迷った後、風に溶け込むように消える。
それでも微かに残る独特な匂いか、ニノが好きでよく使っていた香水の匂いを思い出させた。
線香と香水とでは、全然違うのに…
「ニノ…、ごめんな…、遅くなって…」
俺は墓石に向かって静かに語りかけると、両手をそっと合わせ瞼を閉じた。
俺さ、ずっとお前に謝んなきゃ…って思ってた。
お前はさ、“お互い様だ”って言うかもしんないけどさ、俺…お前のことずっと利用してた。
自分の寂しさ紛らすために…
今でも多分それは変わんないんだけどな?
ついついお前に甘えたくなってさ…
いい加減俺の愚痴ばっか聞き飽きたよな?
俺は両手を合わせながら、心の中でニノに騙り続けた。