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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第26章 番外編☆dolce


一段一段と、頂上を目指して石階段を登って行く。

歩くのには慣れてるし、なんなら体力だって以前よりかは随分ついた。

だからこれくらい平気…と思っていたのは、ほんの数十段で…

丁度中腹を超えた頃には、息は上がるし、膝はガクガクとし始めるしで…

俺は思わずその場にしゃがみこんでしまった。

「なあ、まだあんのかよ…」

「ん? もうちょっと…かな…」

嘘だろ…?

これがまだ続くかと思うと、正直ゲンナリしてしまう。

こなんなことなら下で手だけ合わせときゃ良かった…

後悔する俺の横で、雅紀さんは両手を腰に、膝の曲げ伸ばしをしている。

つか、どこにそんな体力あんだよ…
俺よりオッサンのくせに…

「あと一息だから…」

今度は逆に雅紀さんに腕を引かれ、俺はノロノロと腰を上げ、再び石階段に挑む。

そうして登ること数分…

漸く見えて来た寺の山門を前に、俺は石階段を登る足を止め、一つ深呼吸をした。

「大丈夫か?」

雅紀さんが額の汗を拭い、俺を振り返る。

「なんだろう…、久しぶりにニノと会うと思ったら、急に緊張しちゃってさ…」

らしくない…、ってことは分かってる。

でも、ニノは俺を許してくれるだろうか、って…
翔さんを選んだことを、ニノは喜んでくれるだろうか、って…

そんなことを考えていたら、急に胸が締め付けられるみたいに苦しくなって…

どうしても足を前に進めることが出来なかった。

「雅紀さん…、俺…、本当に会っても良いのかな…?」

「えっ…?」

「俺…、ニノにどんな顔して会えば良いのか、分かんねぇ…」

「智…?」

せっかく登った石階段を、雅紀さんがゆっくりとした足取りで下って来る。

そして俺の前に立ったかと思うと、その長い手が俺を胸へと抱き寄せた。
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