第26章 番外編☆dolce

雅紀さんが運転する車の助手席に座る。

向こうでは歩くか自転車での移動が殆どだから、車に乗るのも久しぶりだ。

一応、翔さんは免許は持ってるし、車だって立派なのを持ってるけど、翔さんの運転は、安全運転な割に怖くて(笑)

｢ねぇ、智はさ、櫻井さんと一緒に暮らすとかさ、考えてないの？｣

｢何で？｣

｢いや、別に意味はないんだけどさ…、そうしてくれると、俺も安心かな…って、思ってさ…｣

｢何それ(笑)｣

｢ほら、一応さ、俺にとっては弟みたいなもんじゃん、智って。だからやっぱ心配なんだよ｣

弟、か…

もしニノがまだ生きてたとして、それでも今と同じように俺を“弟”として見てくれるだろうか…

まあ…、俺がそれを言える立場にないことは分かってるけど…

｢よし、着いた｣

ぼんやりと車窓を眺めていると、そこはすっかり都会の喧騒からは離れていて…

｢ここに…、ニノが…？｣

車を降り、両サイドを緑に挟まれ、ずっと上まで続く石階段を見上げる。

｢和也…って言うよりかは、相葉家の墓なんだけどね…｣

｢そうなんだ…？｣

そっか…

戸籍が変わっても、頑なに“二宮”の姓を名乗っていたニノにしてみれば、相葉家の墓に入るのは、きっと居心地は良くないだろうな…

｢ 上まで結構あるけど、どうする？｣

どうするもこうするも…

｢ここまで来て、手も合わせず帰れっかよ…｣

つか、ここまで来た意味ねーし…

｢確かにそうか…(笑)｣

｢ほら、行くよ？｣

目尻に皺を刻んで、頭をポリっと掻く雅紀さんの腕を引き、俺達は果てしなく続く石階段を登り始めた。