第26章 番外編☆dolce

駅に着くと、俺達はタクシーに乗り、事前に予約してあったホテルへと向かった。

チェックインの時間までは随分余裕があるから、不要な物だけをフロントに預け、翔さんの会社の近くにあるファミレスで雅紀さんを待つ。

駅弁を食べ損なった翔さんは、余程お腹が空いていたのか、ボリューム満点のランチプレートを無心で掻き込んでいる。

口ん中パンパンにしちゃってさ、まるで子供みたいだ(笑)

｢ねぇ、これから会議なんでしょ？｣

｢ん？ そうだけど？｣

｢そんなに食べたら眠くなっちゃわない？｣

俺なんて、それでなくても毎日眠いのに、腹がみたされたら会議どころじゃなくなってしまうのに…

そもそも会議とか、退屈なのに…

｢いや、全然？ 良く言うだろ、“腹が減っては戦ができぬ”ってさ｣

｢それは…そうだけど…｣

きっと翔さんは根っからの仕事人間なんだろうな…

俺とは全然違う。

｢ふー、腹いっぱい｣

ご馳走様でした、と両手を合わせ、ベルトを緩めたお腹を撫でながら、今度はアイスカフェラテに手を伸ばす。

ストローを使わず、グラスに直接口を付け、カフェラテを一気に飲み干した翔さんは、一瞬腕時計に視線を落とすと、コートとビジネスバック、そして伝票を手に席を立った。

｢じゃあ…、俺先行くから…｣

｢うん｣

｢会議終わったら、相葉さんの店に迎えに行くから、待ってて？ 俺も彼には挨拶しておきたいからさ…｣

｢うん、分かった、待ってる｣

俺が笑顔を向けると、安心したように漸く一歩を踏み出す翔さん。

でもその足はすぐに止まる。

｢それから…｣

過保護過ぎなのかなんなのか…、今度は何よ(笑)

｢一応どこにいるかだけ連絡くれる？ じゃないと心配だから…｣

…ったく、いつまでも子供扱いすんだから…