君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第26章 番外編☆dolce
「ご馳走様でした」
新鮮な海鮮で腹を満たして店を出ると、翔さんが俺の腰を抱いて人気のない路地裏へと引き込む。
コンクリートに背中を押し付けられ、乱暴に唇を塞がれる。
舌先を突き入れられ、咥内を舐め回されると、翔さんの支えがなかったら崩れてしまいそうになるくらい、腰から力が抜けて行く。
いつもそうだ。
俺は突然我儘な子供みたく強引になった翔さんに振り回される。
でも俺はそんな翔さんも嫌いじゃない。
寧ろ、優しいばかりの翔さんよりも、素の翔さんが垣間見れるこの瞬間が好きだ。
ただ、心の準備が出来てなかった分、空気を貯めておくことも出来ず…
翔さんが角度を変える合間に鼻から息を吸い込むけど、それだけじゃ全然足りなくて…
息苦しくなった俺は、翔さんの胸をトンと両手で叩いた。
「あ…、ごめん…」
漸く僕の唇を解放して、翔さんが申し訳なさそうに眉を下げた。
「でも夜まで智の顔が見れないと思うと、つい…」
分かってるよ…、俺も同じ気持ちだから…
「マジでごめん…」
「いいよ、そんな謝んないでよ…。俺も、その…翔さんに…」
キスして欲しかったから…
なんて、とても言えなくて、俺は言いかけた言葉を飲み込み、翔さんの背中に両腕を回した。
厚い胸に頬を埋めると、翔さんの鼓動が耳を伝って俺の中へと流れて来る。
「さっきの話…だけどね…」
「うん…」
「俺、何とか都合つけるから…」
「いいの? 無理しなくても…」
ついさっきまで俺の意見なんて聞こうともしなかったくせに、急に気遣ったりするからつい笑ってしまいそうになる。
「大丈夫。俺が翔さんと一緒に行きたいんだ」
それじゃ理由になんない?