君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第26章 番外編☆dolce
「頂きます」
運ばれて来た丼を前に、二人して手を合わせる。
わさびを溶いた醤油を満遍なくかけ、白飯の上にこんもりと盛られた海鮮を口に運ぶ。
「ああ、美味い!」
「うまっ…」
港町ならではの新鮮な魚介に、俺達は揃って感嘆の声を上げた。
俺がこの町を気にいっているのは、新鮮な魚介が楽しめるところにあるのかもしれない。
最近覚えた釣りも、俺のしょうに合ってるし…
「あ、そう言えばさ、再来週の週末さ、本社に行かなきゃいけなくなったんだけど…」
熱い緑茶で、口いっぱいに頬張った飯を流し込みながら、思い出したように翔さんが言う。
「でさ、一緒に行かないか?」
「俺が? 翔さんの会社に?」
「違うよ(笑) ほら、智もずっと会ってないだろ、相葉さんに…」
「ああ、うん」
確かに、店が軌道に乗り始めてからは、電話やメールでのやり取りはあるものの、雅紀さんがこっちに来ることは殆どない。
仮にあったとしても、俺が休みの時だから、直接顔を合わせることもない。
「店のことまあるし、無理にとは言わないけど、もし一緒にいけたらな…って…」
そう言って、翔さんがポリっと頭を掻く。
その顔はまるで、帆立丼の上で光るイクラのように赤くて…
なんだ、そう言うことか(笑)
翔さんの意図を察した俺は、口の中の物を水で流し込むと、わざとらしくスマホのカレンダーアプリを立た上げた。
「再来週…だっけ?」
「ああ、うん…。でも無理にとは…」
「分かんないけど…、雅紀さんに相談してみるよ」
「マジで?」
途端に笑顔になる翔さん。
「でも期待しないでね? 相談してみるだけだから…」
…って、俺の話なんか聞いてないか(笑)