君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第25章 Voice…
窓から射し込む光と、どこからともなく聞こえて来る小鳥のさえずりにも似た声に、俺は閉じていた瞼をパチッと開けた。
と同時に、自分がソファの上にいないことに軽いショックを感じた。
智…?
まだ眠っているんだとばかり思っていた俺は、ソファの上にそっと手を伸ばすけど…
ん…?
いない…?
まさか俺が寝てるうちに…?
俺はガバッと布団ごと飛び起きると、まだハッキリとしない視界に視線を巡らせた。
その時…
「やっと起きた(笑)」
窓の方から声が聞こえて…
「今…何時…?」
俺が聞くと、逆光の中で智がゆっくり振り返った。
着る物が見当たらなかったんだろうか…、素肌に俺のワイシャツを羽織っただけの姿が、まるで天使のように見えて…
俺は思わず見蕩れてしまう。
「丁度八時を過ぎたとこかな…」
「そっ…か…」
普段の起床時間に比べれば遅いくらいだが、週末ということもあって、それ程慌てることも無い。
俺は掛け布団を畳み、ソファの上に置くと、窓の外の景色を眺める智を、背中からそっと抱きしめた。
「翔さんの部屋からは海が見えるんだね?」
「え、うん、まあね…」
建物自体はそう新しくはないが、高台に建っている分、見晴らしだけは抜群に良い。
「智の部屋からは見えないの?」
「俺ん家は…、無理だよ。向かいのデカいマンションが邪魔して、景色なんか何も見えないもん」
「そっか…、海好きな智にはちょっと残念だったね」
言いながらふと思う…
都会と呼ばれる所ならいざ知らず、こんな目立った商業施設もないような町に、ここよりも高い建物があっただろうか、と…
でもそれを智に問う間もなく、智がキスをせがむように肩越しに俺を振り返るから、おれもそれに答えるように、智を更に強く抱きしめながら、上向いた唇にそっと自分のそれを重ねた。