君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第25章 Voice…
「智…?」
掛け布団を抱えてリビングに戻ると、智はもう気持ち良さそうに寝息を立てていて…
「何だ…、寝ちゃったのか…」
話したいことも聞きたいことも、山程あったのに…
仕方ないか…
智は無理してないって言ったけど、やっぱり疲れてんだよな、きっと。
「そんな格好で寝てると風邪ひくよ?」
眠っている智にそっと掛け布団をかけ、俺もその隣に身体を潜り込ませた。
すると、まるで俺がそうするのを待っていたかのように、智が俺の胸にピタッと頭を寄せて来て…
完全には乾ききっていない髪から香るシャンプーの匂いが、俺の鼻先をフワッと擽った。
でも不思議なんだよな…
同じシャンプーを使ってる筈なのに、智の髪先から香る匂いは、俺のそれとは全く違う。
元々智が持つ匂いのせいなんだろうか…
「つか、赤ちゃんみたいな匂いだな…(笑)」
俺は智の髪に鼻を埋めると、その甘い香りをクンと嗅いでから、俄に重くなり始めた瞼を閉じた。
ただ、この部屋には大き過ぎると思ったソファも、大の大人の男二人が寝るには、流石に窮屈を感じずにはいられなくて…
でもこれまた不思議なんだけど、その窮屈さが心地良かったりするんだよな…
これもきっと、俺の腕の中にいるのが智だから…
俺は智が放つ何とも例えようのない甘い香りと、少し高めの体温をすぐ傍に感じながら、深い眠りに落ちて行った。
そう…、俺自身の生まれ持った寝相の悪さで、布団ごと床に転げ落ちたのも気づかない程、深く深く…