君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第4章 strascinando
躊躇いはあった。
ニノを亡くしてまだ日も浅いのに、ましてや雅紀さんに至っては、義理とは言え弟を亡くしたばかりなのに、こんな話をするなんて、どうかしてるって。
でも雅紀さん以外に、相談出来る相手なんていなかった。
雅紀さんは、俺達みたいな種類の人間にも、絶対に偏見なんて持たなくて、寧ろ理解を示してくれる、俺にとっては唯一頼れる存在だから…
その雅紀さんが、俺の視界の端でほんの一瞬ではあるけど、その表情を曇らせた。
当然だ、弟の恋人だった奴が、実は別の男に惚れてるってなったら、誰だって理解に苦しむに決まってる。
事実、この俺がそうなんだから…
「話は分かったよ? で、智はどうしたいわけ? そのたった二回会っただけのその人と、付き合いたいとか…思ってたりするの?」
俺を責めるわけでもなく、ゆっくりとした口調の問いかけに、俺は「分かんない」とだけメモ帳に書いた。
そもそも自分で分かってたら相談なんかしてないし…
「そっか…。俺はさ、反対はしないよ? 和があんなことになってさ、その人と上手く行くことで、智の心の傷が少しでも癒されるなら、良いかなって思う…」
やっぱり雅紀さんは優しい。
普通なら、恋人が死んで喪も開けないうちに、って怒っても当然なのに、雅紀さんはそれすらなく、俺の気持ちを受け止め、理解してくれようとしてくれる。
でもその優しさが、知らず知らずのうちにニノを傷付けてたなんて、この人は全く知らないんだろうな…
「あ、連絡先教えて貰ったんでしょ? 連絡してみたら?」
『出来ないよ…』
「なんで? その人の方から名刺渡すってことはさ、その人も智に興味があるからじゃないの?」
『捨てた。だって俺、電話出来ないし…』
「あっ…、そっか…、そう…だったね…」
そこまで言って、漸く俺が喋れないってことを思い出したのか、雅紀さんがハッとしたように頭を掻いた。
つか、ここまでずっと筆談続けといて、忘れるか普通?