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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第24章 tempestoso…


「入って?」

翔さんに背中を押され、俺は目の前で開かれた扉の奥へと足を踏み入れた。

「あっ…」

途端に鼻先を掠める覚えのる匂いに、懐かしさを感じる。

「散らかってるけど…」

翔さんはそう言うけど、俺は全然気にしない。

だってどんな場所だろうと…環境だろうと、翔さんといられるなら…

と、思ったけど、前言撤回!

「ねぇ、これはさ“散らかってる”のレベル超えてると思うけど…」

リビングに入るなり苦言を呈した俺に、翔さんが苦笑いを浮かべる。

「いや…、だからこれは…、その…、ごめん…」

さっきまでとは打って変わって情けない声を出す翔さんが、愛おしくてたまらない。

「謝らないで? 俺、気にしてないから…」

そうだよな、別に部屋がどれだけ汚かろうと、翔さんといられるなら…、それだけで俺は…

「あ、そう言えば…、快気祝いって何?」

おっちゃんが言ってた…

“親睦会”ってのは表向きで、本当は快気祝いのための飲み会だって…

「病気…だったの? どこが悪かったの? もう平気なの?」

矢継ぎ早に質問を投げかける俺に、翔さんが酷く慌てた様子で首を振る。

「違うんだ、智…」って…

「でも、竜也って人のおっちゃんが…」

「竜也…? あ、ああ、上田か…。あいつ大袈裟なんだよな…」

どういう…こと…?

「とにかく座って?」

翔さんが俺の手を引いてソファに座らせる。

部屋には不釣り合いなくらい大きなソファは、以前翔さんが住んでた部屋にあったのと同じ物だ。

「何か飲む? って言っても、酒かコーヒーくらいしかないんだけど…」

「いらない。それよりちゃんと説明して?」

じゃないと俺…

「分かった。ちゃんと説明するから、とりあえず落ち着いて?」

俺の手をそっと握り、翔さんがフッと息を吐き出した。

「実はね、先週…だったかな、俺熱出してさ…」

「熱…?」

「そう、熱…」

聞き返した俺に、翔さんがクスリと笑って頷いた。
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