君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第24章 tempestoso…
「どうかした?」
並んでエレベーターに乗り込んた俺を、翔さんが覗き込む。
「ううん、何でもない…」
心配かけちゃいけないと思って首を横に振るけど、堪え切れずに溜息が零れてしまう。
溜息の理由は分かってる…、潤さんと雅紀さんのせいだ。
でも実際はそれだけじゃない。
翔さんに会えたことが嬉しくて、マンションにまで着いて来てしまったけど、俺にはずっと気になってることがある。
二人の企みのことはともかくとして、それだけは嫌でも確かめないと…
エレベターが止まり、降りようとした翔さんのコートの裾を掴んだ。
「翔さん…、恋人は…?」
「えっ…?」
聞いた瞬間、翔さんの顔が一瞬強ばった。
「もしいるなら俺…」
これ以上先に進むわけにはいかない。
「どっち?」
もい一度聞き返した俺を、翔さんが真剣な表情で見つめる。
「じゃあ…、俺からも聞くけど…。智は? 智にはいるの? 新しい恋人…」
「俺は…」
「ねぇ、智? 智は、まだ俺のこと想ってくれてるから、ここまで着いて来たんじゃないの?」
「違う?」と聞かれて、俺は咄嗟に首を横に振った。
「好きだから…、他のことなんて考えらんないくらい、頭ん中翔さんのことばっかりで…、だから俺…」
この三年、ずっとそうだった。
何をしてても、俺の頭の中は…頭だけじゃない、心の中まで、全部翔さんで埋め尽くされていた。
「おいで…?」
翔さんが俺の手を強引に引くから、俺は翔さんの胸にボフッと音を立てて飛び込んだ。
「馬鹿だね、智は…。俺も智と同じだよ? 智のこと以外、何も考えられないから…。それに、俺さっき言ったよね、まだ愛してる、って…」
「あっ…」
「冗談だと思った?」
「そ、そんなこと…」
翔さんの言葉を、冗談なんて疑ったこと、ただの一度だってない。
「俺は、三年前と変わらず、智を愛してる。だから、余計な心配はしないで?」
「ね?」と念を押されて、コクリと頷いた俺の額に、少しだけ冷たくなった唇が触れた。