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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第24章 tempestoso…


翔さんが自転車のサドルに跨り、荷台を指差し、

「乗って?」

俺に笑顔を向けるから、俺は小さく頷いてから、自転車の荷台に跨った。

「ちゃんと捕まっててね?」

「…うん」

言われるまま、俺は翔さんの腰に両腕を回す。

背中に ピッタリと顔をくっつけると、分厚いダウンを通して翔さんの体温が伝わってくる。

温かいな…

つか、前にも似たようなこと、なかったっけ?

そうだ、潤さんに騙されて、初めて翔さんの部屋に泊まった時だ。

あの時はまだこうして腰に腕を回すと、汗ばむくらいに暑くて…

そうそう、翔さんのがあんまりドンくさくて笑っちゃったんだよな…

そしてそれは三年経った今でも…

「わっ、翔さん前、前っ!」

全然変わってなかったようだ(笑)

唯一変わったことと言えば…

「…っぶね…」

電柱にぶつかる寸でのところで急ブレーキをかけた翔さんが、額の汗を拭う仕草をするから俺も、

「焦った…」

翔さんを真似て額の汗を拭った。

こんな風に会話が出来るようになったことが、俺達にとっての一番の変化なのかもしれない。

翔さんの目を見て会話出来ないのは…、ちょっとだけ寂しいけど…

「ねえ、翔さんの住んでるとこって、まだ先なの?」

「いや、もうすぐそこだよ。ほら、あの五階建てのマンションがそうだよ」

良かった…

こんな危なっかしい運転じゃ、流石に生きた心地がしない。

ケツだって痛いし…

…って、えっ…?

あのマンションて…、確か俺のアパートの真裏じゃん!

ってことは何か?

潤さんは…いや、潤さんだけじゃない、雅紀さんも翔さんがここにいることを知っていて俺を…?

嘘だろ…、マジか…

自転車を駐輪場に停め、戻って来る翔さんを待ちながら、俺は深い溜息と一緒に肩を落とした。

「お待たせ。行こうか?」

翔さんの手が俺の腰を抱く。

本当は嬉しい筈なのに、二人にまんまと嵌められたんだと思うと、素直に喜べない。
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