君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第24章 tempestoso…
翔さんが待ってる…
そう思ったら時計ばかりが気になって仕方がなかった。
自分でも足が地に着いていないような…、そんな感覚がしたくらいだから、きっと周りからしたら凄くソワソワして見えてたんだと思う。
「俺、戸締りまでしとくんで、今日はもう上がって下さい」
売上の計算をしている俺の肩を、副店長の北山が叩いた。
「いや、でもまだ片付け残ってるし…」
本音を言えば、今すぐにでも帰りたい。
でも、俺が想像していた以上に店は忙しかったようで…
テーブルにもカウンターにも、ジョッキやら皿やら…食器の類が下げきれずに残っている。
この状況で俺一人が…ってわけには、やっぱいかないよ。
しかも俺、こう見えて一応”店長”だし…
「もう少し片付いてから帰るよ」
連絡先は交換したし…、きっと翔さんなら事情を説明すれば分かってくれる。
それに、元々天辺は超えるとは言ってあるし…
俺は再び苦手な電卓に視線を落とした。
でも…
「いいからいいから…。後は俺やっとくんで、兎に角今日は上がって下さい」
北山が俺の手から電卓を取り上げた。
「いや、でも…」
「店長に帰って貰わないと、俺がオーナーに怒られるんですよ」
は?
何でそこで雅紀さんの名前が出てくんの?
「意味…、分かんないんだけど…」
「だーから…、さっき店長をすぐ上がらせるように、ってオーナーから俺に直電があったんですって…。だから今日はもう…」
「そう…なの…?」
そんな電話があったなんて、全然気が付かなかった。
「あ、それと明日なんですけど…。店長、オープンからこっち、全然休み取ってませんよね?」
「ま、まあ…、そうだけど…」
「明日は急遽オーナーが入ってくれるそうなんで、店長はお休みで良いそうです」
へ?
ますます意味わかんないんだけど…
そりゃ本店には、雅紀さんの代わりが出来る奴はいるけど、何で急に…?
「ってことで、お疲れ様でした!」
北山が言うと、店のあちらこちらから「お疲れ様でした」の声が飛んだ。