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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第24章 tempestoso…


「じゃ…、後で…」

「うん…、後で…」

約束を交わし、俺は店に戻ろうと踵を返した。

でも…

「ちょっと待って…」

腕を引かれ、俺は振り向く間もなく翔さんの腕の中に引き戻された。

「俺、戻らないと…」

急に俺が抜けたことで、きっと店の中は混乱してる筈。

それに塚ちゃんのことも心配だし…

またあの竜也って奴に絡まれてたりしたら…

「分かってる。分かってるんだけど…さ、もう一度だけ…良いかな…?」

「何…を…?」

「もう一度だけ、キス…したい…」

耳元で囁かれ、俺の心臓がドクンと脈打つ。

店のことも、勿論塚ちゃんのことも心配だけど、でも俺…

俺は肩越しに翔さんを振り返ると、小さく頷いてから、今度は言われる前に自分から瞼を閉じた。

翔さんの手が俺の頬を包み、熱い吐息がかかる。

そして再び重なった唇…

触れるだけの…、幼ささえ感じるキス…

なのに凄く気持ち良くて…

もし翔さんの腕が支えてくれていなかったら、そのまま腰が抜けたように崩れていたかもしれない。

たかがキス一つで…って、正直情けなくなるけど、仕方ないじゃん…?

それくらい、翔さんのキスは優しくて…、温かいんだ。

「ごめん…、俺もそろそろ戻らないと…」

「うん…」

それまで背中に感じていた翔さんの体温が、静かに離れて行く。

俺はその温もりに名残惜しさを感じながらも、翔さんを振り返ることなく、大急ぎで店へと戻った。

足取りが…、不思議なくらい、とても軽かった。

俺はバイト君達に仕草と口の動きだけで「ごめん」と伝えると、カウンターにズラリと並んだジョッキを両手に持ち、それぞれのテーブルへと運んだ。

勿論、翔さん達グループのテーブルにも…

その時、一瞬翔さんが俺を見て優しく微笑んだような気がして…

俺は顔が熱くなるのを感じた。

ついでに、竜也って奴の眼光鋭い視線も、ね…
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